育成就労制度についての一考察

この度の改正で日本の産業の人材確保を目標とした育成就労制度が創設され、3年後の施行に向けて各関係省庁が運用方針を準備している段階にあるわけですが、これまでの技能実習生との違いあるいは見込みの違いは、技能を習う生徒としての人材ではなく日本で社会人として生きて行く人材を育成するという点である。現状私たち行政書士が接する外国の就労者としては主に技術・人文知識・国際業務の資格の方々ですが、本国の大学を出てから日本にきた経歴の方は別として、大半が来日後2年間日本語学校で学びその後専門士の取得できる一般ビジネスの専門学校に留学生として2年学び就職するという型の若者であるわけですが、彼らの特徴としては、申し訳ないですが吃驚するほど日本語の能力がない、会話がままならなく勤め先のオーナーを介してしか自分の紹介や勤務したい動機を伝えることができない状況です。その人たちの努力次第でしょうがその状況の中で会社の重要な事務手続きや取引先との交渉が1,2年で可能になり任せられるようなるとは果たして思えないわけです。4年間座学で留学生として勉強してきた外国人人材でさえこのレベルの方が大半と思われます。そのことから想像するに、今までの技能実習生が3年かけて

育成されてきたことを同じ3年で、基準の目標があるにしても今回の育成就労制度で中長期在留資格者として日本人の社会人として育てることはむずかしいと感じると同時に技術レベルはいいとしても日本語能力が基礎段階のA2では現場技術職とはいえ心もとないと言わざるを得ない。さらに言及すれば本国から他国にきて仮に5年間その国の社会人と仕事をして生きて行くにはある程度以上の基礎教養が必要と思われます。その点同じ就労資格でも本国あるいは日本で大学を出て学士を取得している人は、見ていて安定して在留資該当性のあるお仕事をしていると思われます。即ち、結論的には、育成就労資格で日本に入国する時点の人材の質をもう一段階上げるべきではないかと考えるわけです。例えば、日本でいえば普通高校レベルの学歴があり、日本語レベルもN4以上、さらに日本で技術職として生きたいという確固とした動機と志を面接等で確認して本国から送り出すシステムを構築すべきではないかと思うわけです。そうしないと日本の産業の都合で間口を広くして人材を募って結局彼らの人生において若い大事な時間をないがしろにしかねない事になると危惧するわけです。事実、人文知識国際の在留資格で就職した若者が初期の期待と希望と異なる状況に追い込まれ、中途で母国に帰ることになる事例を見てきている現状があるので。